新史談民話 田中香涯 東学社. 昭和9 「上古時代における女性の優越」

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昔からこの人の本が好きで読んでいる。

猟奇的な事件、変態性欲などに真価を発揮する。

「変態性欲」という雑誌まで創刊した(笑)、大阪生まれのれっきとした医者である。

 

殺生関白・豊臣英次の性格、日蓮を抉る(宗教性偏執病者)、妾に関する話、など面白い話題がたくさんあるが、ここはひとつ、「上古時代における女性の優越」を特に取り上げたい。

私が独自に気づいた点というか、とっておきの視点があるからである。

 

かつて古代の日本には、和歌山の丹敷戸畔(にしきとべ)、名草戸畔、荒川戸畔、豊後には津援速津媛、五馬媛、肥前には浮穴沫媛、大山田女、築後には田油津媛の名前がみえ女酋長がごろごろ、14人もいる。

邪馬台国の女王卑弥呼も、当時のシナ人からみて、物珍しかったこらこそ倭国の記述が増えたのではないか。

当時すでに男権優越社会になっていたシナ人から珍しく感じられたからこそ、倭国の風俗習慣に関する記述が多くなってしまったのだろう。

夫婦(めおと)、妹背(いもせ)、母父(おもちち)…

我が国の古語で男女の順序をいう場合、女を先にして、言うを常とするということも言葉の上に現れた女子の優越性を実証するものである。

初期、人類は乱婚制だったから、いきおい母が重要になる。

父さんは誰だかわからないが、母はわかるからそれで母権社会となる。

バッハオーフェンや高群 逸枝もそう言っている。

ヨハン・ヤーコプ・バッハオーフェン(バッホーフェン、バホーフェン、Johann Jakob Bachofen、1815年12月22日 – 1887年11月25日)は、スイスの文化人類学者、本業は法学者であるが、古代法の研究を通して古代社会についての造詣を深め、これをもとにした著作を発表して文化人類学に影響を与えた。特に、古代においては婚姻による夫婦関係は存在しなかったとする乱婚制論や、母権制論(1861年) を説いた。

高群 逸枝(たかむれ いつえ、本名:イツエ、1894年(明治27年)1月18日 – 1964年(昭和39年)6月7日)は、日本の詩人・民俗学者・日本の「女性史学」の創設者である。
女性史研究を進め、『母系制の研究』や『招婿婚の研究』などの業績を残し、女性史研究分野の発展に寄与した。

ところで、「考古と古代 発掘から推理する」(金関丈夫 法政大学出版局1982)という本がある。

冒頭、「前線で戦死した巫女ーヤジリが刺さった頭骨」という興味深い一文がある。

昭和25年の秋、長崎県平戸島、根獅子(ねじこ)というところで発見された弥生時代中期のはじめころの女性人骨は、頭骨のてっぺんに、銅の矢じりが突き刺さっていた。琉球というところは、今でもそうした巫女の勢力が幾らか残っているところだが、明の弘治13年(1500年)、八重山のアカハチ(赤蜂)が叛いたとき、その討伐軍には、久米島のノロ、キミハエ(君南風)という者が従軍して功を立てたという有名な事例がある。

この戦争ではたくさんの巫女が戦死している。
かつて、女性も最前線にでて戦ったことがこれでわかる。

さて、女性の優越という状態が続いているのは何をさておき、我が日本であるという説を私は持っている。

家庭の、家族の財布をだれ(どちらが)が握るかという問題がある。

女性が一家の財布を持つということが我々日本人にとっては問題にならず、そんなこと当たり前すぎて話題にもならないが、世界的にみてこれは珍しい。

アラブ社会の男と、西洋社会の男と結婚した複数の日本人女性に実際に聞いて確かめたことだからこれは本当である。

財布は女性が握る。

これは日本社会だけにある「風習、美徳?」である。

だからまだ、日本社会では、女性の優越という状態が続いていると言い切れるのだ。

 

併せて読みたい

母権論 1992/J.J. バッハオーフェン (著), Johann Jakob Bachofen (原名), 佐藤 信行 (翻訳), 三浦 淳 (翻訳), 佐々木 充 (翻訳),三元社

母権論―古代世界の女性支配に関する研究 その宗教的および法的本質〈1〉 1991/J.J. バッハオーフェン (著), 岡 道男 (翻訳), 河上 倫逸 (翻訳) みすず書房
バッハオーフェンは、へーロドトス、ホメーロス、アイカキュロス、エウリーピデースなど膨大な文献に現われる神話伝承と歴史との関連を探り、父権制以前に母権制が存在したことを発見した。アプロディーテー女神に象徴される自由な性交渉(乱婚性)から、デーメーテール女神に象徴される母権制、アポローン男神に象徴される父権制へ、ギリシア、エジプト、インド、中央アジアにわたる、女性支配の雄大な研究は、まったく類を見ないものである。

 

母権制序説 (ちくま学芸文庫) 文庫 2002/J.J. バハオーフェン (著), Johann Jakob Bachofen (原名), 吉原 達也 (翻訳)

↑バッハオーフェンの一連の本も面白く読んだ。だがこの人の欠陥は、最大最古最強の「母権国家」日本に対する考察を欠いていることだ。

惜しまれてならない。

 

本書は、国立国会図書館のデジタルコレクションでそのまま読めます。

新史談民話 – NDL Digital Collections
https://dl.ndl.go.jp › info:ndljp › pid
Title新史談民話. Creator田中香涯 著. Publisher. 東学社. Publication Date. 昭和9. Call Number. 663-175. Source Identifier: NDLBibID. 000000756410.
https://dl.ndl.go.jp/pid/1465355/1/87

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