フランスの推理作家、ジョルジュ・シムノンの「普通小説」が好きである。
メグレはどうでもいい。
私が勝手にシムノン3部作と名付けてる小説群がある(笑)。
「雪は汚れていた」 シムノン選集〈第1〉雪は汚れていた (1969年) ジョルジュ シムノン (著), 三輪 秀彦 (翻訳)、 (ハヤカワ文庫)
「離愁・原題「列車」」 (ハヤカワ文庫) 1975/ジョルジュ シムノン (著), Georges Simenon (原名), 谷亀 利一 (翻訳)
そして、本書 「アルハンゲリスクからきた小男・妻のための嘘」
ユダヤ人と一言も書かずに、彼らの置かれている現状を活写しきっている。ホントに凄い。
翻訳者もいいのだろうが、原文もやさしい中学生程度のフランス語で書かれていると。
つぶやくような短文の積み重ね。
そこに巧みに回想を交え。
上記3冊は、古本屋の店頭で見かけたらすぐ購入してたから数冊づつ持っている。
宝物のような本である。
バーナード・マラマッド(「質屋」)描くところのと同じ、言ってはなんだが「下層の」ユダヤ人たちである。
ロスチャイルドとか、陰謀論とはちがうユダヤがそこにはある。
2023-06-20
真のユダヤ史 Kindle版ユースタス・マリンズ (著) 成甲書房 2012/9/21
↑ここで取り上げたユダヤとは真逆なユダヤがそこにはある。
バーナード・マラマッド(英: Bernard Malamud、1914年4月26日-1986年3月16日)は、アメリカ合衆国の小説家である。ソール・ベローやフィリップ・ロスと共に、20世紀アメリカの著名なユダヤ人作家である。
「アルハンゲリスクからきた小男」は、パリの下町を舞台に、不釣り合いな若い嫁をもらった主人公の、ユダヤ人古書商・切手収集家、ジョナスの悲劇である。
若くて奔放で美人の嫁がジョナスの切手コレクションのなかでも桁外れに高額の30万フランもするトリニダード島の汽船マクラウドとともに姿を消してしまった。
あべこべにジョナスが首をつって死んでしまうまでが描かれる。
たったこれだけのことを超一級の小説に仕立ててしまうジョルジュ・シムノンには感嘆のほかない。
アマゾンレビューに秀逸なレビュー。
存尾 異邦人の哀しみ 2012年1月29日に日本でレビュー済み
最初に読んだ時のつらい話だという印象が非常に残っていて、なかなか再読する気になれなかった作品である。
疑惑を受けた男の運命がストレートに描かれている。しかし今回読み返してみて意外に思ったのが、この主人公の前半生がじっくり書かれていたことである。ロシア生まれのユダヤ人である彼の幼少時代、ロシア革命から第二次世界大戦にかけての家族の放浪の旅。自分が結局異邦人だという認識が哀しい。そして最後2章における主人公の心の揺れ動きと最終決断には、やはりなんとも言えないつらさがある。
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ユダヤ人というのはどこか異邦人なのである。
アランドロン主演で映画にもなった「片道切符」もよかった。
フランスの憲兵隊がこんなにも過酷なのかあと思ったものだ。
出所して田舎で再出発を頑張ろうとする男に対して憲兵隊の監視の目が光る。
監視がひどすぎて暴発に至るのだが、それまでの描写の積み重ねが凄い。
カメラアイというか、とにかく小説の達人だと思う、ジョルジュ・シムノンは。
追記…
SF作家の瀬名 秀明(せな ひであき、Hideaki Sena、1968年1月17日 – )氏が、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」というサイトで、「シムノンを読む」という、毎月更新のすばらしいエッセイを連載している。
https://honyakumystery.jp/24596
すでにもう、105回も連載されている。
私の知らない作品ばかりである。
多作家だからこんなに日本に紹介されていない未訳の作品が多いのかというのも驚きだった。
内容も毎回素晴らしいものである。