NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実 (宝島社新書) NHKスペシャル取材班 (著) 宝島社 2021/11/10

健康 古代史 時事一般


全国の自治体1392カ所を独自調査 話題の「NHKスペシャル」待望の新書化!

長年にわたるひきこもりの果てに、命を落とす――。いわゆる「ひきこもり死」が全国に広がっている。

いま、日本には推計61万人もの「中高年ひきこもり」の人たちがいるとされる。

高齢の親が亡くなった後、生きる術を失った「子」が衰弱死するという事態を、どうしたら回避できるのか?

2020年11月にオンエアされ大きな反響を集めた
NHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作陣が書き下ろす、渾身のルポ。

この番組は見たことがないが、そもそもテレビ受像機がないので、NHKスペシャルでも見ることはできない。

だが、これはこれで読んでよかった。
衝撃を受けた。

最初の横須賀市の事例は充分衝撃的であった。

必死に引きこもり状態から、なんとか救出を図ろうとする自治体職員。
思いも空しく、伸一さんは結局、57歳で栄養失調で亡くなってしまう。

お父さんもお母さんも癌で死んでしまう。
弟とも袂を分かち、弟が家を出て、伸一さんがひとり家に残って、引きこもり始める。

2番目の熱海市の実例にもショックを受けた。

60歳を超えて引きこもる男性。
20年前の家族がそろった写真。
いちばんお気に入りだという七五三の写真。

50歳を超えてから再就職が決まらず、ずるずると引きこもり状態に陥ってしまったという。

様々な背景はあるにせよ、全国でこんな人たちが60万もいるということに驚かされた。

いったん、引きこもり状態に陥った人を一般社会にカムバックさせることも至難の業である。

引きこもり、60万人にも驚くが、それをサポートする自治体職員たちの手間暇もハンパなものではない。

ひきこもりの人達を何とか社会に参加させようと、悪戦苦闘する行政の人達。
一筋縄では行かない支援を延々と続ける職員さん達。

アマゾンレビューに、伊藤邦徳さんの秀逸なレビュー

本書で何度も出てきた言葉に「誰もがいつ引きこもりに追い込まれるか分からない社会の仕組みになっている」という支援する人たち複数の言葉。

これこそ、日本の社会という巨大なダムに空いた「蟻の一穴」だと思います。
今は穴の数がそれほど顕在化していないから、皆それなりの関心を持ちながらも、自分には関わりのない世界の出来事だと思って生きていられるだけで、近い将来社会を揺さぶる事態にならないとは限らないのです。

すでに、近年は社会との繋がり、人との繋がりを絶たれたことを社会や人のせいにする傾向の人による、テロまがいの自殺行為も発生しています。
引きこもりの方々は、外を恨むことなく、自分を責めて引きこもっている、気の弱い心の優しい善人に過ぎないと考えるべきではないでしょうか。

実は私も二十年近く前に引きこもり状態になった事があるだけに他人事ではありません。

それまでは、根拠のない自信過剰で周りを振り回して生きていたのに、仕事を辞めて人との繋がりが途絶えたと感じたとき、自分は世の中の何の役にも立たない人間だったんだと思い知らされ、生きていくのが嫌で嫌で仕方がない期間がありました。
朝、目が覚めたとき、「ああ、今日も一日生きなければならないのか」と思い名が目覚める毎日がどれほど苦痛か、これは経験した者にしか分からないと思います。



新書レベルでは極めて多くの「引きこもり」関係本が出ていることにも驚かされた・
いくつか読んでみたが、特に秀逸だったのは、

中高年ひきこもり (幻冬舎新書) 斎藤環 (著) 幻冬舎 2020/1/29

〇ひきこもりの定義 <–ほかの精神障害が原因ではなく6カ月以上の社会参加がない状態が続くこと
〇中高年のひきこもりは100万人。全体ではその倍の200万人と推定される
〇ひきこもりは、むしろ犯罪率が極端に低い <–そもそも社会と接点がない
〇ひきこもりの人は「困難な状況にあるまともな人」<–まともな人と扱う
ひきこもりはストレスに対するまともな防衛機制

「どんな家庭で育った、どんな人にでも、何歳からでも起こり得る問題、それがひきこもりです。」

「彼ら(ひきこもりの当事者)は本当に『自己中』なのでしょうか?私にはどうしても、そうは思えません。ひきこもり当事者のほぼ全員が『自分が嫌い』と訴えることを知っているからです。」

「彼らは『自宅の外』の世界そのものが怖いわけではなく、外にある『世間』が怖いからです。」

「ひきこもっている人は『世間』を嫌いますが、『社会』が嫌いなわけではありません。」

「なぜなら『働かなくても大丈夫』と安心できて初めて、ひきこもり当事者は安定した就労動機を“発見”するからです。」

「お金は薬」

「指示や説教、議論や説得、アドバイスやダメ出しは、その内容が正しいかどうかにかかわらず、当事者の力を奪ってしまう可能性があります。」
「(ひきこもりの)予防という発想を捨てることが、最大の予防策になる。」

最後に、最初に上げた横須賀市の伸一さんの、癌で亡くなったお父さん、吉行さんが綴っていた1973年の日記から

当時、吉行さんはまだ41歳。そして、伸一さんは10歳。

「子供の成長をもっと近くで見守りたい。
自分の子供たちが大人になる時代には、もっとよい世の中になっていますようにー」

かく言う私も、普段から「引きこもり」だと自称しているが、とてもとても、この人たちの沼は深いとしか言えない。
完全リモートワークで、週2回、食材の買い出しに出かけ、帰りに図書館に寄るだけ。
私はまだ妻がいるが、いなければどうなったか知れない…

追記

ふと思ったんだが、こういう人間賛歌というか人生賛歌みたいな曲を聞かせて社会復帰を図るなんてできないものか…

バート・バカラック賛……That’s What Friends Are For 友だちとはそういうもの

バート・バカラック賛……That's What Friends Are For 友だちとはそういうもの
バート・バカラック賛……That's What Friends Are For 友だちとはそういうもの

 

タイトルとURLをコピーしました